大学や研究所に所属する研究者の多くが、学術論文を完成させる上で翻訳会社を利用しています。
学術論文の翻訳と言っても、その目的はさまざま。翻訳会社選びについてアドバイスをしている情報がたくさんありますが、この「目的」の部分についてきちんと定義をせずに、オススメ翻訳会社を紹介しているものが少なくありません。
ここでは、学術論文を翻訳する目的を明確にすることで、どのようなサービスをより重視すべきかを提案します。
必要なサービスを提供している翻訳会社を絞り込むことで、正しく、より適した翻訳会社を選ぶ参考にして下さい。なお、ここでいう翻訳は、英文翻訳を前提とします。もちろん他の言語でも、以下の説明は十分共通する内容です。
Contents
1.ボリュームと用途からみた、学術論文翻訳の目的
事業として研究に取り組む研究者が執筆する学術論文は、大学や公的な研究機関に所属する研究者の執筆する学術論文とでは、執筆目的に違いがあります。
前者が企業研究成果の発表であるのに対して、後者は個人の研究成果の発表です。前者と後者では、論文翻訳にかけられる予算も大きく異なります。
企業の研究所では、日本語論文として社内で検証・承認を行い、その後翻訳を外注する、というプロセスが一般的に行われています。そして、翻訳会社に「全文翻訳」を依頼します。
これに対して、大学や公的研究機関の研究者は、自分が英文で書いた論文をより精度を高めるための「校閲」を翻訳会社に依頼します。
「全文翻訳」と「校閲」では、翻訳会社に期待するサービスの内容・範囲が違ってきます。「校閲」は得意でも、「全文翻訳」は苦手とする翻訳会社もあり、その逆のパターンもあります。発注前に実績を確認することが大事です。
ボリュームによる目的の違いの他に、用途による学術論文翻訳の違いがあります。学術論文の主な用途は、「学術誌投稿」、「学会発表用要項」などが挙げられます。
「学術誌投稿」は、掲載されることで研究者としての業績や評価につながるため、研究者として最も重要な仕事の一つです。
その次に、研究者の評価指標として用いられるのが学会発表数。ですから「学会発表要項」にも同じく高品質の翻訳が求められます。「学術誌投稿」と「学会発表用要項」のいずれも、翻訳会社の実績が翻訳に大きく反映されます。
どの学術誌、どの学会にも、それぞれ独特の表現や言い回し、言い換えればクセのようなものがあります。その表現を使うことで査読をパスしやすくなります。
従って、ここでも発注前には、実績確認が大事です。どこの学術誌投稿原稿、もしくは、どこの学会発表用原稿の翻訳実績があるかを確認することで、信頼できる翻訳会社を絞り込むことができるでしょう。
ここまで、学術論文翻訳の目的を明確にする重要性、またその目的に合致する実績をもつ翻訳会社を選ぶことが望ましいという説明をしてきました。
ここからは、学術論文の翻訳会社を選ぶ際、実績の他にどのような点を確認すべきかをご紹介します。
2.明確な専門領域
大雑把な分野や業界名ではなく、より正確な領域名称で自社が対応できる専門領域を公表している翻訳会社ほど、学術論文翻訳への顧客ニーズに応えていると言えます。
学術分野では、専門領域が細分化されていて、例えば「○○学科」は、幾つもの「○○系」に枝分かれしていて、全く異なる研究活動が行われています。
HPやパンフレットで、具体的な専門領域を明示している翻訳会社は、学術分野の特性を良く理解していると捉えて良いでしょう。
分野から、さらに一歩踏み込んで専門領域を確認することは、より精度の高い翻訳サービスを受けるために、最も重要な要素です。
3.専門領域で実力のある翻訳者の存在
学術論文翻訳において、オールラウンドにこなせる翻訳家は必要ありません。研究者に並ぶぐらいの高度な専門知識を持ち、専門用語を正しく使い分けることができる翻訳者とは、書けるだけではなく、読解力も必要とされます。
査読審査の段階で、最も重点が置かれるのは、研究内容や研究成果であることは当然ですが、研究意義や価値が査読者に伝わる英語表現ができることで、最終的な採択判断につながります。
そのためには、提供された論文から正しく研究の目的や意義、研究者の目指している結論を理解する能力が必要であり、それができる翻訳者が、“実力のある”翻訳者と言えます。
そのような“実力のある”翻訳者の存在を確認する方法として参考にしたいのが、翻訳者プロフィール紹介です。翻訳会社によっては、所属する翻訳者のプロフィールや経歴をHPで公開しているところもあります。
また、利用者からの評価やコメントを公開し、翻訳者の指名ができるシステムの翻訳会社もあります。同じ翻訳者に繰り返し対応してもらえるのは、発注側としては安心できますよね。
優秀な翻訳者がいる業者
翻訳を外注する必要性が生じた時、満足できる翻訳を得るために、誰もが「優秀な翻訳者」に仕事を依頼したいはずです。けれども、「優秀な翻訳者」とは一体どのようなスキルをもった人を指すのでしょうか?特に初めて ...
4.誠実でスピーディなアフターフォロー
どんなに事前確認をしても、納品された翻訳が期待したレベルに満たないことも起こり得ます。その際に、指摘した問題に対して、誠実な対応が提供されていることも翻訳会社選びの重要ポイントです。翻訳はアフターフォローが不可欠なサービスです。
学術論文を投稿する研究者の大半が高い英語力を備えていることが多く、翻訳された成果物に求めるレベルも高いものです。
一般文書とは異なり、学術論文というアカデミック領域においては、伝わる翻訳とは論理的で且つ正確であることが重要とされています。明らかな誤訳とは違う、このような観点からの翻訳の質への指摘にも、誠実な対応ができることが学術論文の発注先として相応しい翻訳会社です。
5.参考にしたいリアルな声、口コミ
ここまで、学術論文の翻訳会社の選ぶ際の注意と正しく選ぶポイントをご紹介してきました。最後にもう一つ付け加えたいポイントがあります。
それは、口コミです。他の翻訳分野に比べても、学術論文翻訳は口コミが大きな翻訳会社選びに寄与しています。口コミを翻訳者選びの基準にするのは、特に大学に所属する研究者の間に目立つ傾向です。
翻訳会社自身のHPに記載されている情報に加えて、利用者のリアルな声も参考にしてみて下さい。納得のいかない点は、翻訳会社に直接問合せてみましょう。
その際に誠実な対応をしてくれる翻訳会社ほど、大事な学術論文の翻訳を依頼するに相応しい翻訳会社に違いありません。