分野を問わず、日本の研究者の多くが学術誌へ英文論文を投稿する際に、さまざまな翻訳サービスを利用しています。
近年のグローバル化の波は、産業界にとどまらず、アカデミックな世界にも波及しており、たとえ日本を拠点とする学会でも、その発行する学術誌への投稿論文は英文での執筆を指定しているケースも珍しくありません。
「どの学術誌へ、論文が何本掲載されたか」は、大学、研究機関、また民間企業の研究所等で研究に従事するあらゆる研究者にとってその研究価値をアピールするため、それと同時に、その研究価値が公平に評価される上で、最も重要な指標となっています。
現在では、研究内容や研究者としての実績評価は、学会での発表回数よりも、むしろメジャーな学会誌への掲載回数が重視されるともいわれ、それが翻訳分野の中で投稿論文に関する割合を急拡大している要因の一つとなっています。
英語以外の言語が第一言語とされている分野は非常に限られており、大半の分野において学術誌は英語を公用言語としています。
最近では、海外留学経験があり、自分自身で英文論文を書けるだけの語学力をもつ研究者が随分増え、特に若手の研究者にその傾向が目立ちます。自分で英文論文を執筆できる研究者であれば、翻訳業者に依頼するサービスとしては、文章の質を高めるための「英文校閲」や「英文校正」が妥当です。
しかし、実際には論文執筆に十分な時間をかけることができる研究者は、あまり多くありません。
語学力はあっても一から英文論文を書いている時間が十分にとれない、という極めて多忙な研究者の多くが利用しているのが、翻訳業者に和文で執筆した論文を渡して全文を英訳してもらう投稿論文の和英翻訳サービスです。
近年、投稿論文に関わる翻訳ジャンルの市場が大きくなるにつれて、学術論文翻訳を専門とする翻訳業者も急増しています。
また、他業者との差別化を図るために、さまざまな新サービスも登場しています。これは、翻訳ニーズの多様性に応える意味では良いことなのですが、一方では、選択肢が多過ぎる、サービス内容が分かりにくい、価格体系が複雑等の不便さも生じさせています。
このように、本当に必要なサービスを適切な費用で利用するための判断がしにくい、という困った状況の中で、投稿論文の翻訳は一体どのように依頼すればいいのでしょうか。
投稿論文の翻訳を依頼した結果の良し悪しは、最初の翻訳業者選択にかかっていると言っても過言ではありません。ここからは、投稿論文の翻訳に欠かせない翻訳業者の要素をご紹介します。
専門的でトレンドに応じた実績とマーケティング力
“適切な”翻訳業者とは、どのような翻訳業者でしょうか。第一の要素は、投稿しようとする論文の専門分野に、十分な実績と経験があることです。どんなに評判の良い翻訳業者でも、論文テーマと合致する専門分野での実績や経験が乏しい場合は、選択肢から除外する方が無難です。
実績の中身も大事です。多ければ良いというものでもありません。アカデミックな世界も、産業界と同様にトレンドがあります。常に新しい案件を数多く取り扱い、情報収集しているマーケティング力を備えた翻訳業者こそ、選択の価値があります。
そのような業者は、注目される研究領域や、その分野でどのような論文が発表されているか等、個人では得られない情報を持っています。
そしてそれを基に構築した独自のノウハウで、優れた学術誌の査読審査を通過できる論文に仕上げるためのサービスを提供しています。
翻訳業者がよく自社HPに実績を紹介していますが、最新実績を別途確認することをお勧めします。
専門分野は合致していても、数年も以前の実績しかない業者では、今投稿しようとする論文への適切なアドバイスはあまり参考にはなりません。場合によっては、むしろマイナスになってしまう恐れもあります。
コミュニケーション力に優れたコーディネータ
翻訳を依頼する翻訳業者を選択できたら、次はコーディネータとの情報共有です。
和文論文を、質の高い学術論文審査に通過する、優れた英文投稿論文にする仕事には、複数の優れた人的リソースを必要とします。
通常は、翻訳者、英文校閲者、翻訳チェッカーの3人がそれぞれの専門スキルをいかした作業を行い、その進捗や作業品質をコーディネータ1名が管理するという、1チーム4名体制で一つの案件を扱うケースが一般的です。
プロジェクトリーダーであるコーディネータに、希望納期や予算範囲、また最も重要な情報として希望する投稿先を伝えることで、適切なチームが編成され、期待される英文投稿論文を完成させることが可能になります。コミュニケーション力に優れたコーディネータの存在が、プロジェクトの成否を決める場合も少なくありません。
専門知識と経験豊富な翻訳チームの存在
投稿論文の翻訳では、語学力だけではなく、研究者レベルの高度な専門知識を持ち、専門用語を正しく駆使できる翻訳者や翻訳校閲者の存在が不可欠です。
コーディネータを通じて提供される情報を基に、正しく研究の目的や意義、研究者の目指していることを理解し、最適の英語で表現することが投稿論文翻訳チームに求められる要素です。
翻訳業者によっては、翻訳チームのプロフィールを事前に紹介してくれるところもあります。どんな翻訳チームが作業するのか気になる場合は、プロフィール提出をリクエストすると良いでしょう。
投稿論文の翻訳サービスには、内容、料金、また納期に幅があります。例えば査読審査が厳しいメジャーな学術誌への投稿を目指すのであれば、多少費用が高くても、より専門性の高い翻訳チームによる徹底した論文英訳を行うサービスを利用する価値があるでしょう。
最近は、専門スタッフが投稿先を選択・提案し、査読審査通過率アップをサポートするサービスも登場しています。
必要に応じて、適切なサービスを選択し、依頼することが大切です。