翻訳と聞いてすぐに思いつく言語と言えばやはり英語、中国語、そして韓国語がメジャーかと思います。しかし、近年の訪日外国人観光客の急増や、従来市場の飽和による新たな海外市場開拓の動きは、これまであまり馴染みの無かった希少言語の翻訳ニーズを押し上げています。
タイ語、ベトナム語、インドネシア語。このあたりは、もはや希少言語とは言えなくなってきています。ここ最近ではアラビア語やトルコ語、またアフリカ各地の言語等、新たな市場や海外パートナ―となり得るような国々の言語の翻訳が重要性を増してきているのです。
希少言語への翻訳を外注する際には、英語や中国語や韓国語などのメジャー翻訳言語とは異なる注意点があります。ここからは、希少言語の翻訳外注で失敗しないために、発注前に是非知っておいていただきたい5つのポイントをご紹介します。
希少言語の翻訳費用は高め
多言語化の主要3ヶ国語である英語、中国語及び韓国語の翻訳は、需要の増加に伴って、供給、つまり翻訳業者と翻訳者の数も増えています。そのため、業者間の価格競争もあり、日本語からこれらの言語へ、またはその逆への翻訳料金は、低下傾向にあります。
その一方で、希少言語翻訳の需要は増えつつあると言ってもまだまだ少なく、従って希少言語翻訳に対応できる翻訳業者や翻訳者も多くはありません。
このような需給バランスから、 メジャー翻訳言語である英語、中国語あるいは韓国語の翻訳料金に比べて、希少言語の翻訳料金はどうしても高くなってしまいます。 特に日本語と希少言語間の翻訳は高くなる可能性も。このような場合は、日本語もしくは希少言語を一度英語に翻訳した上で、希少言語ないしは日本語に翻訳する、という方法もあり得ます。
正式発注前の翻訳見積りの際には、このような方法での料金も是非確かめてみて下さい。
他にも料金が高い場合、そして逆に安い場合には色々な理由があります。よろしければ以下の記事も併せて読んでみてください。
料金が高い会社と安い会社
現在の日本では、会社規模の大小を問わず、あらゆる産業において翻訳需要が急増しています。 それを牽引する主たる事象は、国の政策として取り組む「モノづくり産業国家」から「観光立国」への重点産業転換、また2 ...
少ない実績や経験による品質確保の難しさ
希少言語の市場がまだ小さいことから起こり得る問題は、翻訳料金の他にもあります。
それは、希少言語翻訳で実績のある翻訳業者や翻訳者が少ないこと。需要が小さいのですから、これは致し方ないのですが、そのため限られた業者や翻訳者に発注せざるを得ないことになります。
翻訳品質は、業者と翻訳者の経験と実績が大きく寄与します。メジャー言語と違い、希少言語の翻訳の場合は、この点があまり期待できないのですが、それでも少しでも多くの経験や実績がある翻訳業者および翻訳者に発注することは大切。是非、発注前にHPや電話等で情報収集を怠らないようにして下さい。
特定の分野に限られる
品質確保の難しさと同様に、希少言語は発注できる分野もまだ限られています。現時点で最も多いのは、おそらく契約文書や製品保証等の商取引に関わるビジネスや技術文章ではないでしょうか。今後もしばらくはこの傾向が続くように思われます。
一口に「経験や実績が豊富」と言っても、一体どの分野での経験が豊富なのかを確認する必要があります。正しい翻訳には、分野独特の用語や言い回しを習熟した翻訳者の専門知識が不可欠です。
一般向けの資料の翻訳であれば、分野にこだわる必要はないと考えがちですが、一般向けであれば誰が読んでも分かりやすい表現や言葉を選べる翻訳者が必要です。
翻訳業者また翻訳者の経験分野をしっかり確認することが、希少言語の翻訳を外注する際にも不可欠です。
短納期は困難
ニーズが高く、市場競争の激しい英語や中国語、あるいは韓国語のようなメジャー言語の翻訳では、より安い翻訳料金やより短い納期を提示する翻訳業者の選択は可能です。けれども、希少言語の場合は、これが難しいのが現状です。
現在希少言語の翻訳に対応できる翻訳業者の数と翻訳者の数は、まだまだ少なく、言語や翻訳分野によっては外注できればラッキーという場合も。メジャー言語の翻訳のように、発注から24時間以内の納期、というレベルの短納期での発注には無理があります。
希少言語の翻訳を外注する際は、納期に十分な余裕をもつことが大切です。発注前の見積もりの段階で、納期の確認も怠らないように注意して下さい。
希少言語に限らず、締め切りがある場合や急遽準備しなければならないときなど、急いで納品してもらう時には注意事項があります。以下の記事を参考にしてみてください。
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締め切りがある(急ぎで)翻訳を依頼する
応募期限ギリギリまで執筆に時間がかかった海外学術誌への投稿論文、辞令で急きょ海外転勤が決まり現地で提出が必要な公文書、あるいは、運営しているECサイトの商品に海外から商談がもちかけられ即答を求められて ...
機械翻訳は危険過ぎ
翻訳費用を低く抑えるため、また短納期を実現するために、機械翻訳で全体を翻訳し、その後の翻訳チェックを翻訳チェッカーが行う翻訳業者が増えています。
翻訳品質はそこそこで良く、それよりも安く、また早い納期を最優先とする翻訳案件であれば、この方法でも問題ないと思います。
ここまで何度も書いてきましたが、希少言語の翻訳需要はまだ成長段階です。機械翻訳の精度は、翻訳実績によって構築されるデータベースが命。翻訳案件を多くこなすほど、データベースが構築され、ケースに応じた翻訳が可能になります。
現在フリーで誰もが使える機械翻訳も、ユーザーによる膨大なデータベースのお陰で、従来よりも翻訳品質が改善されつつあるものの、まだ完璧とは言えません。
希少言語に機械翻訳が利用できるのは、しばらく先のことになるだろうと思われます。翻訳業者から見積もりをとった際にあまり費用が安い場合は、要チェック。翻訳者ではなく、全てを機械もしくは部分的に機械を活用した翻訳をされてしまう可能性があります。希少言語の翻訳を外注する際は、人による翻訳サービスを提供する翻訳業者を選択することをお勧めします。