多くの翻訳会社がオプションサービスの一つとして提供している、ネイティブチェック。
一般的には、翻訳言語を母国語とする人が行う、翻訳済み原稿の校正作業のことを指します。例えば英訳された原稿であれば、英語を母国語もしくはそれと同等の語学力を持つ人が原稿を確認するので、ネイティブによるチェック、つまりネイティブチェックと呼ばれるわけです。
では、ネイティブなら誰でもネイティブチェックができるのでしょうか?英語がペラペラなら、英訳された原稿のネイティブチェックができるでしょうか?答えは、ノー、です。
ネイティブチェックの担当者に求められるスキルは、漠然とした語学力ではありません。何よりも重視されるのは、専門分野における豊富な知識や経験であり、それを活かした高度な読解力と文章力です。
翻訳者によって翻訳された原稿は、ネイティブチェックが吟味し、加筆修正することで、原稿の目的や用途に適したより質の高い原稿となります。専門性が高く、その専門分野に相応しい文章であることが必要な翻訳に欠かせないのが、ネイティブチェックなのです。
翻訳原稿の質を上げるも、下げるも、最後のネイティブチェックにかかっています。
では、目的に最適のネイティブチェックを受けるには、一体どうすればいいのでしょうか?ここからは、ネイティブチェックのサービスを利用する際のポイントをご紹介します。
利用する前に:本当にネイティブチェックは必要なのか?
ネイティブチェックサービスを利用する前に、ちょっと考えて下さい。本当にネイティブチェックが必要ですか?
先述した通り、専門分野で使用される原稿のため、高いレベルの翻訳原稿に仕上げるためのエクストラサービスがネイティブチェックです。例えば、欧米学術誌への投稿論文、あるいは海外企業との重要な契約文や公的な発表文など、専門用語を正しく使った極めて高精度な文章がネイティブチェックを必要とする案件です。
一方、社内共有するためにだいたいの内容が分かれば良い場合や、ニュースや雑誌記事の概要を速報として伝えるためなど、高い専門性を必ずしも求めない翻訳案件にネイティブチェックを利用するのは少し大げさかもしれません。
ネイティブチェックが、オプションサービスとして提供されている理由の一つは、あらゆる翻訳案件で必要とされるものではないからです。
きちんと採用試験を設けて翻訳者を採用、あるいは契約している翻訳会社であれば、ネイティブチェックを入れなくても、翻訳原稿の質は決して悪くはないはずです。
ネイティブチェックを利用すべきか迷ったら、先に無料のトライアル翻訳を試してみることをおススメします。トライアル翻訳で納得できたら、その案件はネイティブチェックまでは必要無い、と判断できますよね。
トライアル翻訳に関しては以下を参考にしてみてください。
トライアル翻訳を上手に利用する
近年の日本における翻訳需要は、かつてない伸びを見せています。 その需要増を支える要因の一つは、インバウンド対策。海外からの訪日外国人に向けて、官民一体による大規模なインフラの多言語化プロジェクトから、 ...
ネイティブチェックには情報提供がとても大事!
ネイティブチェックを必要とするケースとして今最も急増しているのは、さまざまな欧米学術誌への論文投稿です。
知名度の高い学術誌へ論文が掲載されれば、研究者の評価としてダイレクトに影響する学術論文ですから、その執筆は研究者にとって何よりも大事な仕事と言ってもいいかもしれません。
論文に掲載されるために大事なことは、当然その研究内容や研究結果ですが、その内容を学術的に価値のあるものだと査読者に伝えるのは論文であり、最終的には文章力での勝負。そこでネイティブチェックの出番です。
より質の高いネイティブチェックを受けるために必要なのは、依頼者からの情報提供です。どの学術誌に投稿したいのか?これは最重要な情報です。それは学術誌によって指定された書式があったり、同じ分野でも専門用語が微妙に違う場合も少なくありません。
また、同じ英語でも、イギリス英語を用いる欧州系の学術誌と、アメリカ英語の米国の学術誌では表現方法が大きく異なります。
さらに、専門分野の経験が豊富なネイティブチェッカーでも、翻訳された原稿からだけでは十分に研究内容や成果を文章に仕切れない場合もあります。原稿には書かれていない補足や参考資料を追加提供することは、ネイティブチェックの担当者により研究内容を理解してもらい、より良い原稿に仕上げてもらう上で非常に有効です。
チームワークの良い翻訳会社を選ぶ
ネイティブチェックが翻訳原稿を最後に仕上げる重要な作業だということを前述しましたが、翻訳会社で行う翻訳の仕事はチームワークです。
通常、翻訳コーディネーターが案件を受けて、翻訳者からネイティブチェックへと、複数専門担当者による連携作業によって翻訳原稿が完成します。
自身で英文原稿を書ける語学力と文章力がある研究者であれば英文校閲だけを発注する場合もありますが、日本語ネイティブの研究者には英文翻訳と英文校閲をまとめて依頼するケースが圧倒的に多いのが現状です。その方が研究者にとって論文執筆に費やす時間を短縮でき、また質の良い原稿を作成することにもなるからです。
翻訳会社のチームワークの良ければ、それによって適切なネイティブチェックを可能にし、最終的に納品される翻訳原稿の質を良くします。
それは依頼者が最初に接する翻訳コーディネーターに伝えた依頼内容や要望が、最後のネイティブチェック担当者にまできちんと情報共有されるから。もし、コーディネーターに伝えたはずのことが、翻訳者やネイティブチェッカーから質問され、その都度何度も依頼者に確認の連絡が入るようなら、残念ながら納品される原稿の質はあまり期待できないかもしれません。
翻訳会社のチームワークの良さは、1回や2回のメールや電話では判断しづらいですよね。そんな時も無料のトライアル翻訳を利用して、その翻訳会社の対応品質をチェックしてみても良いかもしれません。
まとめ
いかがでしょうか?ネイティブチェックのサービスを利用する際に、どんな点に注意すれば良いか、参考になったでしょうか?オプションとして提供されるネイティブチェックは、多くの場合、追加費用が発生します。
また、ネイティブチェックを行うことで、翻訳だけを発注した場合よりも、少し納期が延びると考えられます。ネイティブチェックを利用する時には、費用と納期に十分な余裕があるかどうかの確認をお忘れなく!