現在の日本では、会社規模の大小を問わず、あらゆる産業において翻訳需要が急増しています。
それを牽引する主たる事象は、国の政策として取り組む「モノづくり産業国家」から「観光立国」への重点産業転換、また2020年東京オリンピックを目指したインバウンド対策の強化などが挙げられます。
さらに、その翻訳需要は企業や法人に止まりません。最近目立つ傾向は、個人による翻訳外注需要の高まりです。その背景として考えられることの一つは、個人でも簡単に商取引を可能にするAmazonをはじめとするECサイト、もしくはオークションサイトの登場です。
店舗を持たずに、一定の手数料を支払えば、すぐにビジネスを始められるECサイトは、小規模ビジネスオーナーには非常に便利なシステムです。サイトによっては自動翻訳機能も付いているので、日本語の紹介文を用意すれば機械翻訳で英文での情報発信も可能。開店と同時に、海外のお客様にも商品を知ってもらえる機会が得られます。
このような翻訳需要の拡大に伴って、翻訳業者の数も急増しています。翻訳や通訳を専門とする業者ばかりではなく、翻訳とは全く異なる業界・業種から翻訳産業に参入している新しい翻訳業者も多く、従来とは異なる革新的なサービスを提供しています。
数も、サービス内容も、また料金も多彩になった翻訳業者。その中から、良い翻訳業者を探すために誰もが最初に行うのは、ネット検索です。けれども、翻訳発注の経験があまりない場合は、業者を絞り込めるだけの十分なキーワードが思いつきにくいものです。
そのため、検索から膨大な数の翻訳業者が出てきてしまい、途方に暮れるという残念な結果になりがちです。
また、検索された各業者のHPには、他社と差別化するための多彩なサービスが紹介されていますが、どれも複雑な内容で、特に初めて翻訳外注をするような利用者にとっては、それが却って業者選びを難しくする情報になっています。サービス内容も大事ですが、翻訳を外注する上で最も気になるのは、やはり料金。そして、その料金も各社各様です。
多数の翻訳業者の中から、なるべく安い料金で、高い品質の翻訳を提供してくれる一社を選ぶには、一体どうすればいいのでしょうか?
ここからは翻訳料金に注目して、翻訳会社を選ぶポイントをご紹介します。
翻訳料金が「高い」または「安い」要因
日本語から他言語に、または他言語から日本語へ、という翻訳作業を外注する場合、翻訳業者が提示する翻訳料金は、言語と、それに伴う文字数やワード数当たりの設定額から算出されています。
多くの翻訳業者は、自社HPに文字数やワード数当たりの単価を掲載しています。お客様にとって、最も関心の高い料金に関する情報掲載がHP上に無い業者は、選択肢から省いても良いでしょう。
文字当たり、またはワード当たりの単価にも、各社で大きな差異があります。なぜ、そのような差が生じるのでしょうか?いくつかある要因の中でも、最も影響しているのは、翻訳者のクオリティです。専門知識や経験を伴う高度な文書の翻訳と、一般的な文書翻訳では、担当する翻訳者が異なり、当然、単価にも差異が生じます。
また翻訳会社が、翻訳者をどのように確保しているかも、料金へ大きく影響する要素です。優秀な翻訳者を専属雇用し、一定レベルの翻訳を安定供給できる体制にしている翻訳会社と、翻訳案件が生じる都度外部のフリー翻訳者に発注する体制の翻訳会社では、人件費の差異に伴って、料金単価も異なってきます。
翻訳業界も他の産業と同様に、さまざまな経費が単価に影響しています。例えば、受注獲得のための多彩な広告や販促活動を展開している翻訳会社であれば、その宣伝費が少なからず単価に反映されている場合もあり得ます。
翻訳料金をなるべく安くするためには
翻訳会社は、翻訳品質を上げるためのさまざまなオプションを紹介しています。翻訳単価を見て安いと思ったのに、品質向上や安心度アップを理由に勧められたオプションをつけたら、結局高額な翻訳費用を支払うことになってしまった、という話は珍しくありません。
このような苦い経験をしないためには、事前に必ず見積もりをとりましょう。不明な明細については、納得できるまで確認すべきです。専属翻訳者がいる、いないが料金単価に影響すると前述しましたが、そのような点も確認すると良いでしょう。
スキルの低い翻訳者が翻訳するために、オプションをつけないと翻訳品質が維持できないような体制が、料金化されている場合があります。
料金確認の観点のみならず、見積もり依頼時の翻訳会社とのコミュニケーションは、発注先選択の最大の判断要素になります。顧客から翻訳の目的や希望をしっかりと聞き取り、余計なサービスを紹介することなく、適切な料金を提示する翻訳会社であれば、その料金が最安値です。
翻訳にかける適正料金とは
翻訳を外注する際に大事なことは、その目的です。言語を翻訳し、その原稿を誰に対して、どのように使用するのか?事前にそれを明確にすることで、翻訳発注の精度が上がり、結果として無駄な翻訳料金を支払う危険を回避できます。
翻訳を外注した企業や個人にとって、原稿を翻訳することは最終ゴールではなく、翻訳された原稿を使ったビジネスや作業が後に続いているはずです。低品質の翻訳が、その後に続く仕事の質まで低下させてしまう可能性もあり、翻訳料金だけをみて「高い」や「安い」を判断してしまうことはやや軽率とも言えます。
関与するプロジェクト全体の中で、翻訳がどのような位置を占めるのか、その重要性や影響度に応じて、御社にとっての適正料金を判断して下さい。