何らかの仕事を外注する時、発注先を決める判断材料として欠かせない見積り。
一社だけではなく、ここはと思う複数の発注候補先から見積りをとる、いわゆる相見積りで比較検討したことがあるという方もいらっしゃるでしょう。
翻訳を外注する場合も、全く同じです。翻訳外注を失敗しないために、必ず発注前に見積り依頼をして下さい。翻訳を外注して失敗した、という苦い経験をしたことがある方に多くみられる原因として、「精度の低い見積りから発注先を選んでしまった」、または「見積り依頼時のチェックが甘かった」、等の見積りに起因することが挙げられます。
見積りの精度を高めるためには、発注者側が事前に用意しておくべき資料や情報があります。ここで言う情報とは、納期や原稿の使用目的等を指します。そして資料として必ず必要なものは、原稿です。まだ原稿ができていない状況で、翻訳発注先を決めて翻訳者を確保しておきたい等の理由から、発注する原稿とは異なる原稿で見積りを依頼してしまうケースがあります。
翻訳業者はその原稿をもとに、適切な翻訳者や妥当なサービスを選定し見積りを作成します。ですから、正式発注の原稿が見積り依頼時と大幅に異ならないようにすることは重要で、それによって見積りの精度アップにつながります。
「見積り依頼時のチェックが甘かった」という翻訳外注失敗談は、翻訳を初めて外注した方に多く、その経験を生かして2度目以降の発注時は念入りに見積り項目をチェックするようになった、という話もよく聞きます。できれば、誰しも最初から失敗したくはないはずです。ここからは、翻訳見積りの依頼時に注意してほしいチェック項目をご紹介します。
基本翻訳料金
基本となる翻訳料金は、文字やワードによる単価から原稿の文字数やワード数で算出されます。ほぼ全ての翻訳会社が自社HPやパンフレットで、文字単価やワード単価による料金表を公開しています。中には、一般的な文章から高度な学術論文まで、3グレード前後に区分した単価設定をしている業者もあります。
原稿の文字数やワード数は、基本機能として多くのソフトに入っている文字カウントで簡単に確認できますので、単価計算が正確かどうかを確認しましょう。
実は、文字やワードのカウントの仕方が、発注者と業者との間で微妙に異なる場合が少なくありません。原稿ボリュームが大きいと、案外大きな料金差にもなります。
また、原稿の目的に応じた適切なグレードでの単価が適用されているかも、要チェックです。
ネイティブチェックの有無
人件費は業界不問で最もコストアップにつながる項目です。翻訳も同様です。翻訳原稿の用途によっては、翻訳者のみならず、ネイティブチェックを必要とする場合があります。
当然ながら作業者の人数が増えれば、それだけ料金も高額になりますが、翻訳業者の中にはネイティブチェック込みの料金プランを設定しているところもあります。絶対にネイティブチェックを必要とする案件であれば、そのようなプランを活用すると良いでしょう。
一方で、料金次第でネイティブチェックを利用したいと考えている場合は、プラン料金に加えて、ネイティブチェックがある場合と無い場合の両方の見積り依頼をし、各料金を比較検討することをお勧めします。学術論文などの高度な専門性や知識を必要とする翻訳発注の場合は、ネイティブチェックの他にチェッカーと呼ばれる校閲担当者の有無も確認しましょう。
修正保証の有無
納品された翻訳原稿に対する修正リクエストに応じる修正保証というサービスがあります。元の原稿内容が発注後に修正または変更されることも珍しくなく、また論文審査通過のために高品質の翻訳を必要とする学術論文翻訳における顧客ニーズに応えるサービスです。学術論文の翻訳やそれに匹敵する原稿の翻訳の見積り依頼には、この修正保証の有無も確認して下さい。
また修正対応期間や対応納期などの保証内容のチェックも要チェックです。
逆に、一般的な原稿で詳細な確認も必要とはしない案件にも関わらず、修正保証が有、などと不必要なサービスが加算されていないかをチェックすることも大事です。
証明書発行
海外の大学や会社、または公的な機関に対して、日本で発行された公的文書を現地言語に翻訳して提出しなければならない場合があります。
このような公的文書の翻訳には、誰が翻訳をしたかという証明書の添付も必要な時があります。公的文書の翻訳実績が豊富な翻訳会社であれば、このような証明書の発行を行っていますが、実績の無い翻訳会社ですと特別な有償サービスとして対応されてしまう可能性もあります。
最近では、学術論文審査で「ネイティブチェックを受けたか?」などの語学的な指摘が目立つため、投稿時に翻訳証明書を一緒に提出する研究者が増えています。従来以上に翻訳証明書発行は重要なサービスとなってきています。発注しようとする原稿の目的から、証明書発行の有無もしっかり確認して下さい。