応募期限ギリギリまで執筆に時間がかかった海外学術誌への投稿論文、辞令で急きょ海外転勤が決まり現地で提出が必要な公文書、あるいは、運営しているECサイトの商品に海外から商談がもちかけられ即答を求められている。このように緊急度の高い提出や返信のための翻訳を依頼したい時、どのような点に注意が必要でしょうか。
短納期の場合の料金表
どんなに急な案件でも、やはり料金は気になります。急ぐからとはいえ、いくらでも払う、というのは余程特殊なケースでしょう。
翻訳業者の中には、通常の翻訳日数で納品する料金と、短い日数で納品する料金と2通りの料金表をHPで公開しているところがあります。急ぎの翻訳を依頼する場合は、既にこのような料金体系が確立している業者の中から選ぶ方が無難です。急ぎの翻訳の受注実績が少ない業者では、業者と翻訳者の対応能力が不十分な場合があります。
また、通常よりも高い料金になるのは致し方ないにしても、通常納期の料金との差が大き過ぎる見積りが提示されてしまう場合もあります。短納期に実績豊富な翻訳業者であれば、このような心配をすることはありません。
業界や分野の実績有無の確認
発注しようとする翻訳業者に、依頼したい翻訳の用途に応じた業界や分野で十分な実績があるかどうかの確認は重要です。これは、急ぐ、急がないに関わらず、全ての翻訳案件を発注する前に必要な作業です。商取引契約書でいくら実績が豊富な翻訳業者でも、投稿論文の翻訳の発注先としては何の価値もありません。
急ぎの案件であればこそ、納品された翻訳原稿を念入りに確認したり、修正する時間が無い可能性が高いのですから、納品原稿をそのまま安心して使用できる高品質の翻訳サービスを提供できる業者選びが必要です。そのようなサービスを提供できる翻訳業者は、自社HPにおいて実績のある業界や分野をハッキリと紹介しています。
専属翻訳者の有無
急ぎの翻訳案件の場合は、トライアル翻訳ないしはサンプル翻訳を実施して発注側が翻訳者を選別したり、指定したりする余裕はほぼ無く、その作業は100パーセント翻訳会社に委ねられます。前述した業界や分野での実績の有無を確認する重要性は、この翻訳者指名にも大きく関係します。
翻訳する目的や案件の質に応じて、適切な翻訳者を選択し、作業を指示するという一連の作業をスピーディに、かつ確実に実施するためには、特定業界や実績の有無と、またそれに応じた専属翻訳者の存在が必要になります。専属翻訳者を持たない翻訳業者は、受注に応じ、その都度外部の翻訳者を調整するため、最終的な翻訳者が決まるまで時間を要します。
最悪の場合は、適切な翻訳者との調整がうまく行かず、専門外の翻訳者が応急対応することも全くないとは言い切れません。専属翻訳者を保有する翻訳会社の料金単価は、外部の契約翻訳者を主体に運営されている翻訳会社の料金単価よりも、いくらか高い場合があります。これは、人件費等の諸経費が付加されている結果と推測されますが、より高い安心感と安定感を確保できるのであれば、僅かな料金アップは十分に価値ある投資と言えるのではないでしょうか。
安心のための修正保証
とにかく、目前の締め切りや提出期限に間に合わせたい翻訳案件ですが、案件によっては提出後に内容の確認や再提出を求められる場合も少なくありません。例えば、学術誌への投稿論文は査読審査の段階で、査読者ないしはレビュアーからさまざまな指摘や質問が提起され、審査に通過するために、指摘箇所を書き換える必要が生じる時もあります。
通常、査読審査の結果がいつ来るかは投稿側には分からず、急に連絡を受けて直ちに対応を要求されることも珍しくありません。そのような場合も慌てることなく対応できるように、長めの修正保証を提供している翻訳業者に翻訳を依頼していると安心です。案件によっては、修正保証1週間でも十分かもしれませんが、投稿論文の事例のように修正ニーズが発生する時期が判別できないような案件については、長めの修正保証付き、またはオプションとして選択しておくことも一考の価値があります。
公文書には証明書発行を忘れずに
まずは期限に間に合うように翻訳を依頼することが最優先のために、細かい注意や配慮が二の次になってしまう可能性があります。中でも見落されがちなのが、「翻訳証明書」。特に公文書の翻訳には、正規の専門翻訳会社が実施した翻訳であることを証明する「翻訳証明書」が添付されていないと海外機関や自治体で受理してもらえない場合があります。
また、投稿論文の審査でも、審査員から“翻訳チェックを受けたか?”という指摘が最近増えているそうです。そのために論文審査を通過できなくなってしまっては、残念ですよね。そのような場合の備えとしても、「翻訳証明書」は活用できます。急いでいる翻訳依頼だからこそ、安心保障としてできることは確実に抑えておきましょう。