近年の日本における翻訳需要は、かつてない伸びを見せています。
その需要増を支える要因の一つは、インバウンド対策。海外からの訪日外国人に向けて、官民一体による大規模なインフラの多言語化プロジェクトから、個人による小規模ビジネスまで、さまざまな規模と内容の事業において翻訳の需要が拡大しています。このような翻訳需要の増加を受けて、翻訳業者の数も急増しています。
選択肢が増加することは悪い事ではないのですが、一方で、特に初めて翻訳を外注する人や会社にとっては、数多くの翻訳業者の中から最適な一社を選択することを困難なものにしています。
その困難を解決する最も代表的な方法が、見積もりをとる、です。それも、複数の翻訳会社からの相見積もりをとることがポイントです。これにより、最も気になる料金という指標によって、候補となる翻訳会社間での比較が可能になります。
見積書には通常納期も記載されていますので、発注案件の最低限の条件を満たしているかどうかは、相見積もりをとることで判断できます。
けれども、ワードや文字数をベースに算出された費用と、納期回答だけで、翻訳会社を決めてしまって、本当にいいのでしょうか?
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トライアル翻訳の重要性
かつて翻訳会社の数がまだ多くなく、また依頼する翻訳もあまり特殊な案件が無かった頃は、見積もりだけで翻訳会社を決めることも、珍しくはありませんでした。
しかし、近年目立つ翻訳需要の特徴は、専門分野における経験や知識をもった翻訳者による作業を必須とする翻訳案件の急増です。専門性の高い翻訳者による、高品質の翻訳を提供できる翻訳会社であるかどうか、一体どうすれば確認できるのでしょうか?
残念ながら、翻訳品質は数字での指標が示しづらく、またさらに厄介なことには、発注者側の好みという不確定な基準によるところも軽視できません。
従って、事前に翻訳品質を確かめるには、実際に翻訳をしてもらうしかありません。そこで、顧客からの要望に応えるサービスとして、現在多くの翻訳会社が提供しているのが、トライアル翻訳です。
トライアル翻訳は、発注前の顧客が抱く翻訳品質に対する不安を解消するため、発注予定の原稿の一部を、基本的には無料で翻訳するサービスです。通常は、初めて発注する、という顧客を対象に実施しているサービスのようですが、中には既に発注履歴があっても担当の翻訳者を交代したい等の要望に応える方法として、トライアル翻訳を運用している翻訳会社もあります。
ここからは、より発注案件を依頼するに相応しい翻訳会社を選ぶ上で、このトライアル翻訳をどのように利用すれば良いかを説明します。
トライアル翻訳を上手に利用するコツ①:翻訳者の確保
トライアル翻訳のサービスを利用する最大の目的は、翻訳品質の確認です。稀ですが、トライアル翻訳の品質は極めて高いにも関わらず正式発注した翻訳の品質が低かった、という話を耳にします。
このような残念な経験をしないように、担当する翻訳者が正式発注時も継続して担当してくれるかどうかを、トライアル翻訳実施前に確認することをお勧めします。
多くの翻訳会社では、トライアル翻訳の担当者がそのまま継続して担当することを保証しています。より誠実な翻訳会社は、翻訳者のプロフィール情報も翻訳納品時に提供しています。
けれども、正式発注がいつになるかハッキリしない案件に対しては、翻訳会社側も特定の翻訳者を確保することが難しい場合もあります。
言い換えれば、正式発注がほぼ決まっている段階で、トライアル翻訳を依頼するのが最も適切なタイミングであり、担当して欲しい翻訳者を確実に確保できることにつながります。
トライアル翻訳を上手に利用するコツ②:翻訳者の能力が確認できる文書
翻訳品質を事前に確認するトライアル翻訳は、通常無料で行われます。従って、翻訳ボリュームには制限があり、和文英訳の場合で、多くても400文字程度、少ない場合は200文字という条件を提示している翻訳会社もあります。
この限られた文字数の条件下で、トライアル翻訳をより有効に利用するコツは、翻訳者の能力が判断しやすい部分を翻訳文書として依頼することです。
専門知識が無いと翻訳が難しい文書や、業界用語が多用されている文書をトライアル翻訳してもらうことで、翻訳者のスキルレベルを容易に事前確認することができます。
ここで誰が翻訳しても大きな差がでないような文書を提示してしまうと、トライアル翻訳の意味が無くなってしまいます。
トライアル翻訳サービスを行う翻訳会社の中には、トライアル翻訳用の文書を含み、発注予定の翻訳原稿すべての提供を求めるところがあります。また、サービス対象を法人からの依頼に限定していることもあります。
翻訳会社側にとっても無料で提供しているサービスのため、さまざまな条件が伴うのも、ある程度は致し方ないかもしれません。
トライアル翻訳を上手に利用するコツ③:翻訳会社の対応力の確認
依頼できる翻訳原稿のボリュームが小さいだけで、トライアル翻訳は、正式発注をコンパクトにまとめたようなものであり、即ち、正式発注を疑似体験する絶好の機会とも言えます。
翻訳品質を確認するだけではなく、翻訳会社そのものの対応力を確認するためにも、納期に余裕がある案件であれば、是非トライアル翻訳を利用して下さい。
無料のサービスだからと、誠実さやスピード感に欠ける対応をする翻訳会社も少なからず存在します。翻訳品質とは、翻訳だけで判断できるものではありません。それを理解する上でも、トライアル翻訳を利用する価値は十分にあります。