語学力を活かした仕事として真っ先に思い浮かぶ、翻訳業。プロや専門職として翻訳家や翻訳者を目指すなら、翻訳に関する検定での高スコアや資格取得をもっていることで仕事の機会や採用のチャンスが広がります。
では、翻訳の世界でどんな検定や資格があるかご存知でしょうか?国内には、翻訳の質を高め、優れた専門家の育成を目指す翻訳団体が2つあります。一つは日本翻訳連盟で、もう一つが日本翻訳協会です。これ以外にも特定の専門分野に限定して翻訳者を認定する団体が存在し、その分野における翻訳の質の維持、人材の確保や能力向上を図っています。
ここからは、翻訳に関してどのような検定や資格があるのかを具体的に紹介します。
Contents
1.翻訳実務ならJFTほんやく検定
まず、実務経験者が実力を試すには、日本翻訳連盟のJFTほんやく検定があります。
この検定試験は、翻訳者を目指す初心者向けの基礎レベルの4級と5級、さらに実務経験者向けの実用レベル1級から3級までの、全5段階で翻訳能力を判定します。実務経験者向けの実用レベル試験は、特許、金融、医学・薬学など、翻訳ニーズの高い6分野に分かれているのも特徴です。
翻訳に興味がある人や、実務経験は無いけれど翻訳者になりたい人が、現時点での翻訳能力を確認することができますが、この検定試験はどちらかというと実務経験者を対象にしています。
例えば、現在金融分野の翻訳を担当している翻訳者が、より需要が伸びている医療分野にも仕事の幅を広げたいので、この検定の実務経験者向け実用レベル「医学・薬学」分野で1級を取得する、というような活用方法です。
現役翻訳者や翻訳家が、仕事の幅を広げたい、または現在の専門分野での翻訳能力のブラッシュアップを図りたい、という場合に有効な検定だと言えます。JFTほんやく検定は、日英・英日に特化しています。
2.翻訳専門職を目指すならJTA公認資格試験
日本翻訳協会が運営し、合格者はJTA公認翻訳専門職として認定する試験です。
つまり合格することによって、日本翻訳協会を通じて翻訳の仕事を得ることができますし、経験の有無を問わず専門翻訳者としてプロフィールで謳うことができます。
但し、合格からの認証有効期限は5年と設定されています。翻訳の世界も日進月歩。翻訳専門家なら、常に現在のニーズに応える翻訳スキルを保有してしかるべき、という考えのもとに有効期限が設定されているようです。厳しい基準があればこそ、産業界からの信頼度の高い資格と言えます。
JFTほんやく検定と異なり、JTA公認資格試験は、日英・英日の他に日中・中日の試験枠も設けています。
また、インターネットで在宅試験なので、世界中どこに居ても受験できます。さらに、この資格試験は産業分野別以外に、英日・日英の出版翻訳に特化した検定試験もあり、その中でも絵本、ロマンス、ビジネス書などジャンルを細分化しています。
これ以外にも、翻訳プロジェクトマネージャー資格試験などもあり、JTA公認資格試験は産業界から求められる翻訳ニーズに応える翻訳者や翻訳家、あるいは翻訳業界で活躍したい人に適した資格試験と言えるでしょう。
3.ソフトウェア業界ならITソフトウェア翻訳士認定試験
産業向け翻訳の中でも、ソフトウェア業界での活躍を目指す翻訳者向けには、ITソフトウェア翻訳士認定試験があります。
IT翻訳に携わる翻訳会社5社が共同で認定協会を立ち上げ、運営している業界独自の翻訳資格です。
ITと一切関係のない産業は無いと言っても過言ではない今、ITの進化速度は益々加速するばかりです。モノづくり産業では、それらの最新ITを使った製品に関する技術文書や取扱説明書などの翻訳を必要とする文書が増える一方です。世界標準の認証や特許取得にも、最新のIT技術を理解し、正しく翻訳する人材を常に必要とされます。
ITソフトウェア翻訳士と聞くと、極めて特化された領域のように思われるかもしれませんが、ITは幅広い産業に関わりがあり、またあらゆる産業を最速でリードする分野で常に新しい技術に接することができる翻訳者です。テクノロジーに興味があり、産業界の最新動向に密着した専門翻訳者になりたい人は、是非挑戦してみて下さい。
4.知的財産分野なら知的財産翻訳検定
産業界のみにならず、アカデミックの分野でも特許出願が増えています。
特許を取得すると同時に、その知的財産権利と価値を守るためには海外での特許取得が必須の昨今です。翻訳会社でも、特許をはじめとする知財関連文書の翻訳専門チームを設けているところが少なくありません。
法的知識と、また技術面での知識の両方が無いと成り立たないこの分野は、翻訳者に高い専門性が求められています。
この知的財産翻訳検定は、産業界からの強いニーズに基づいて立ち上げられた日本知的財産翻訳協会によって運営されています。
検定試験によって、初心者の3級から、特許明細書の翻訳、さらには知財分野での専門翻訳者として推薦できる1級までの、3段階に判定されます。この検定で1級を取得すれば、翻訳会社の知財担当の翻訳者として、また製造会社の知財部専属の翻訳者としても、活躍できるチャンスが得られるでしょう。
まとめ
ここまで、国内で代表的な翻訳に関する検定や資格試験をご紹介しました。
翻訳者として活躍するには、自分の得意分野を見極めて、専門領域を絞り込み、そこで実績と経験を積むことが大切です。
その専門性を誰が見ても分かるカタチでアピールする上で最も有効で、信用度が高いものが、これらの検定や資格試験の結果です。これから翻訳者になるため、また現役翻訳者がワンランク上の翻訳者となるための一手段として、受験してみてはいかがでしょうか。